わんこを癒す魔法のスープ|獣医さんが贈る犬のボーンブロスの効果と作り方

愛犬の元気のカギは、“目に見えないコラーゲン不足”
犬の食事といえば、ドライフードと水だけ。
それが当たり前になっている昨今、改めて考えたいことがあります。
「犬のからだに本当に必要なものは、足りていますか?」と。市販のフードの多くは、保存性や価格の面から植物性たんぱく質が多用されています。
植物性のタンパク質には、「関節や皮膚、内臓を支える丈夫な組織」=コラーゲンを作るためのアミノ酸が不足しています。
つまり、タンパク質としては足りていても、体の屋台骨を作るための栄養素が現実には不足しているケースが非常に多いのです。その“目に見えない不足”を、やさしく、おいしく補ってくれるのが、ボーンブロスです。
皮・スジ・軟骨など、コラーゲンが豊富な部位をじっくり煮出し、
ゼラチンやコラーゲンペプチドなどの消化しやすい形で届けてくれるこのスープは、まさに魔法の一杯。どんなサプリメントやお薬よりも、愛犬を元気にしてくれます。今回の記事では、私が「骨汁先生」としてたどり着いたこのスープの真価を、臨床の視点と犬たちの変化、飼い主さんの声をもとに、熱くご紹介します。

犬にやさしい“骨のスープ”|ボーンブロスってなんだろう?
ボーンブロスとは、骨・皮・腱・靭帯など、コラーゲン豊富な部位をじっくり煮出してつくる、ゼラチンたっぷりの滋養スープです。鶏ガラや豚足、首の骨などを時間をかけて煮込むことで、消化吸収されやすい形に分解されたゼラチン(=加熱されたコラーゲン)が溶け出し、関節・皮膚・腸の健康を支えてくれます。ボーンブロスが“魔法のスープ”と呼ばれるゆえんは、そのやさしさとパワフルさの両立にあります。
コラーゲンの材料となるアミノ酸はもちろんのこと、煮込む過程で骨髄から染み出す微量ミネラルや脂質、そして旨味成分がスープに溶け込み、犬の体と心をやさしく癒やしてくれるのです。獣医師として注目したいのは、弱った体に必要な栄養素が、消化吸収しやすい形でスープに溶け込んでいること。そこにこそ、ボーンブロスの“本当の価値”が存在します。
関節に悩みがある子、皮膚がかさつく子、胃腸が敏感で食欲が安定しない子。
そんな子たちに、ボーンブロスは“おいしく栄養を届ける”という最良の手段になり得ます。

なぜ効くの?ボーンブロスの科学
ボーンブロスが“魔法のスープ”と呼ばれるには、科学的な背景があります。まず注目したいのが、ボーンブロスに豊富に含まれるコラーゲンの材料となるアミノ酸たち。ドライフード主体の食生活では不足しがちな「グリシン」「プロリン」「ヒドロキシプロリン」といったアミノ酸が、ボーンブロスにはたっぷりと溶け込んでいます。
アミノ酸に限らず、長時間の加熱と酸による分解によって、コラーゲンは“ゼラチン”や“ペプチド”といった吸収されやすい形に変化します。これらの栄養素は、弱った胃腸や年齢を重ねた体にも、すっと染み渡ります。そして「材料が来たからコラーゲンを作りなさいよ」と体に働きかけ、傷ついた場所の修理を促します。
ゼラチンには、腸のバリア機能を整え、炎症を和らげる働きがあります。
腸の粘膜を守り、善玉菌の働きをサポートしてくれることで、全身の健康に寄与してくれるんです。はやりの腸活ですね。
そして、もう一つのキープレイヤーがグリシン。このアミノ酸は、皮膚や筋肉、結合組織の修復に欠かせないだけでなく、肝臓のデトックスや脳神経の安定化にも貢献する、多才な成分です。慢性の皮膚疾患やステロイド治療中の子においても、グリシンの恩恵が大きな支えになります。
ほかにも、プロリンはコラーゲンの合成に不可欠であり、グルタミンは腸粘膜と脳の健康に深く関与しています。
これらの栄養素が、ボーンブロスという一杯のスープにぎゅっと濃縮されているのです。

どんな症状にいいの?コラーゲン不足と体のトラブル
ボーンブロスが海外でエリクサー(万能の治癒薬)と呼ばれる理由は、体の屋台骨であり、あらゆる場所の修理にも関わる”コラーゲン”の材料が詰まっているから。実はこのコラーゲンが不足している状態こそ、さまざまな体の不調につながる見えないリスクなのです。
🦷 歯周病
歯ぐきと歯をつなぎとめる歯根膜や支持組織は、コラーゲンでできています。
コラーゲンが不足すると、歯と歯ぐきの接着が弱くなり、歯周病菌が侵入しやすくなります。特に、トイプードルやミニチュアダックスなどの小型犬は、遺伝的に歯周病リスクが高いため、コラーゲンの補給が重要です。
🦴 椎間板ヘルニア・関節疾患
背骨のクッションである椎間板、関節のクッションである軟骨、その周囲の関節包や靱帯など、すべてコラーゲンで構成されています。
コラーゲン不足が続くと、クッション性が損なわれ、椎間板ヘルニアや変形性関節症のリスクが高まります。
🩹 皮膚トラブル
乾燥やかゆみ、脱毛の背景には、コラーゲン不足による皮膚のバリア機能の低下が潜んでいることも。
体の内側から、肌そのものの素材を届けることで、健康な被毛と皮膚を育てる土台ができます。
💓 心疾患
実は、心臓の弁や弁を引っ張る腱索もコラーゲンでできています。
弁がもろくなると、逆流や異常な音(心雑音)の原因に。
特に高齢犬や小型犬に多い弁膜症において、弁を補強する素材を届けるという視点は見落とせません。
こうした「素材の不足」こそが、病気の進行や再発を招く──見えないけれど、深く根を張る“原因”なのです。
私はこれまで、歩けなくなった犬に鍼治療をしてきました。一度は歩けるようになったワンちゃんが、椎間板ヘルニアを繰り返し、がっかりした飼い主さんとともに再来院される──そんな場面に、何度も立ち会ってきました。けれど、椎間板の材料となるボーンブロスを毎日の食事に取り入れていただくようになってから、再発が目に見えて減ってきたのです。
だからこそ私は、臨床で感じた確かな手応えを、犬を愛する皆さんに届けたいと思っています。体の素材を、無理なく・おいしく・効率よく補ってくれるこのスープを、もっと多くの子に届けてあげたいのです。

簡単で続けやすい|わんこボーンブロスの作り方
体に良いものでも続けられなければ意味がありません。家庭で気軽に作れるボーンブロスのレシピをお伝えします。
【基本の材料】
鶏の手羽先(または骨付き肉)…500g〜1kg
水 … 1.2〜1.5リットル
りんご酢(なくても可)…大さじ1程度
【作り方】
1.骨付き肉を鍋に入れ、水を加えて火にかけます。
2.沸騰したらアクを取り、弱火にしてコトコト7〜8時間煮込みます。
3.火を止めて冷ましたあと、スープをボウルなどに移して冷蔵庫で一晩置きます。
4.翌日、表面に固まった脂をすべて取り除いてから使用してください。※酸化した油は、弱った体にとって負担になるため
骨を取り除いたら完成!
スープは製氷皿や小分け容器に入れて冷凍保存もOK。体重5kの犬で 1日に大さじ1〜2杯を、普段のごはんにかけるだけでOKです。
🌿 ワンちゃんに合わせて調理法をアレンジ
・胃腸が弱い子には、沸騰させずに80度くらいでじっくり24時間煮込むと、黄金色のやさしいスープとなります。胸やけしにくく、消化にやさしい仕上がりに。
・忙しいときには、圧力鍋で約45分煮込むことで、コラーゲンがしっかり分解されたトロトロスープに。ゼラチンたっぷりの“こっくり”としたスープが体をやさしく支えてくれます。
ボーンブロスは、わんこの体調や季節にあわせて食材を加えることで、無限のアレンジをワンちゃんと楽しめます。

もっと楽しく|“魔法のスープ”アレンジアイデア
ボーンブロスをもっと楽しむために、味をちょっと変えてみよう!ボーンブロスを魔法のスープに変えるひと工夫ご紹介します。ワンちゃんの、「あ、これ美味しい!」という表情を、ぜひ楽しんでください。
🍖 骨の種類を変える
鶏手羽先 → 鶏ガラ・鶏首(部位を変える)、豚骨・鹿の骨、魚のアラなどに変えてみると、香りやコクが変わって楽しみ倍増。
🧂 うま味素材をちょい足し
昆布、干し椎茸、焼きあごやはまぐりなど、旨味食材を加えるとわんこの喜びが急上昇。
🌿 香りづけで変化を
火を止めてから、少量の海苔、大葉(しそ)、あるいは生姜のしぼり汁をほんの少し加えると、香りの変化も楽しめます。春先など、気候の変化の激しいときにオススメです。
🍠 ちょっとした具材を一緒に煮る
にんじん(皮ごと)、栗(渋皮をむいたもの)などは、煮崩れにくくやさしい甘みが出て、スープに深みが加わります。柔らかくなったものをほぐして混ぜると、満足感もアップ。
アレンジのコツは、「がんばりすぎず、ちょっとだけ変えてみる」こと。 わんこが嬉しそうに飲んでくれる顔を想像しながら、気軽に楽しんでみてくださいね。
私は昆布と干し椎茸をルーチンでボーンブロスに入れ、酢はアップルサイダービネガーを使っています。

毎日のごはんにどう取り入れる?|与え方と注意点
せっかく作ったボーンブロス、どのくらい、どのタイミングで与えればいいのか? 毎日のごはんに取り入れるうえでのコツを、わかりやすくまとめました。
【基本の与え方】
目安量:体重5kgあたり大さじ1〜2杯(約15〜30ml)
タイミング:毎日の食事に、温めてかけるのがおすすめ
保存方法:冷蔵で3日、冷凍なら1〜2週間以内を目安に使い切るとよいでしょう
【こんな使い方もおすすめ】
食欲がない日に、スープだけを飲ませておなかの休息日
(食事のかわりにたっぷりのスープ50−100cc程度)
夏にブロスたっぷり“スープごはん”に
寒い日の朝、温かさと香りで胃腸を目覚めさせるための食前スープ
【注意点】
脂を取り除くのを忘れずに(特に胃腸が弱い子は重要です)
骨のカケラが残っていないか必ず確認しましょう
ボーンブロスはサプリや薬のように「与える」ではなく、 犬が「自分で食べたい」と思わせてくれる栄養のカタチ。
日々の食事に優しさとあたたかさを。 そのひとさじが、わんこの“元気のスイッチ”をオンにしてくれますよ。

まとめ まずは手羽先から|魔法のスープ、はじめの一歩
ここまで読んでくださってありがとうございます。
少しでも「やってみようかな」と思えたら、早速お鍋に火を入れて、“はじめの一杯”をワンちゃんと楽しんでみてください。
最初はうまくできなくても大丈夫。ちょっと濃すぎた、あっさりしすぎた、そんな経験も全部、わんこに寄り添う時間になります。気がつけばスープを見つめるわんこのまなざしに、きっと何かあたたかいものが宿るはずです。
私も実際にボーンブロスを作り続け、愛犬たちと飲み続けています。不思議なもので、*愛犬のため*なら骨を砕いたり煮込んだりする手間が苦にならないんですよね。ワンコ達の喜ぶ顔を見ると、「また作ろ」って自然に思えるんです。
どうぞ今日から、あなたと愛犬の暮らしにひとさじの魔法が加わりますように
あじな動物病院 獣医師 中西 遵
ボーンブロスの解説や手作り動画をInstagramやYouTubeでもご紹介していますので、よろしければ「骨汁先生」で検索してみてくださいね。

あたたかなひとさじが、今日もわんこを包みますように
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