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犬のかじる幸せを守るためにー歯石除去、麻酔について

遵先生

愛犬の口臭でお悩みの飼い主さんに、あじな動物病院ではどのように歯石を取るのか?全身麻酔について不安のある方へ、犬の麻酔で気をつけているポイントなどをお伝えします。

目次

1 なぜ歯石を取る必要があるの?

ボン

七面鳥のアキレス腱は格別だねえ。ガジガジ。

エル

犬の僕らはかじるの幸せ。

遵先生

歯のケアをすることは口臭の予防の他に、犬がかじる幸せを守ることと、歯周菌が体に広がって病気になるのを防ぐ2つの意味があるよね。

歯石予防ー犬がかじることを大切にする


 以前、私は「犬はドッグフードを食べているから、歯が抜けてしまって無くなっても大丈夫です。」と飼い主さんに真顔で話している時代がありました。しかし今では私も犬の飼い主として、犬の健康やストレス発散、幸せのためには「噛む」「かじる」という行為がとても大切だと痛感しています。人の研究では噛むという「リズム運動」は、幸せホルモンの一つである「セロトニン」の分泌が活発になると言われています。※1

愛犬の毎日の「ガジガジ幸せ」を大切にするために、犬の歯を一生元気に保ちたいですね。

歯石は万病のもと


 もうひとつ、歯周病を予防する大切な理由があります。心臓病の犬の半数近くで、心臓から歯周病の起こしている菌と同じが見つかったという研究があります。※2 この事実から歯周病菌が歯茎から血管に入り込んで腎臓や肝臓など体のいたるところで悪事を働く可能性があるのです。
 Raw Meaty Boneという犬に骨をガジガジさせてあげようという本があるのですが、著者のTom Lonsdale獣医師が、歯周病でボロボロになった犬はエイズウイルスを発症して免疫不全になってしまった人のようだと言っています。歯石がたくさんついて歯周病がひどくなると、口の中で歯周病菌と体を守る免疫細胞の戦いが絶え間なく続き、犬は消耗して免疫力が落ちてしまうのです。

 歯石を除去することは、病気の予防につながります。全身麻酔が必要なために飼い主さんへ積極的に歯石をオススメすることをためらっていたことも過去にありますが、今では未来に起こる大きな病気を予防するために歯をキレイにするという信念で歯のケアをしています。

2 どのように歯石をとっているの?

あじな動物病院ではどのように犬の歯石をとっているのか、流れをお伝えします。

歯のチェックと麻酔前の体調チェック


犬の口臭がひどい時、飼い主の方々は歯周病でないかと動物病院に来られます。
歯周病、歯石以外でも、
・口内炎
・のどの炎症
・口、歯茎、舌やのどの腫瘍
・内臓臭(胃炎、尿毒症など)
さまざまな病気で口臭がひどくなることがあるので、口臭の原因が何かを確認します。犬の歯周病がひどいときは、数日間は歯周菌をやっつける抗生物質を犬に飲ませてもらってから歯の治療を行います。

また、歯石の除去・歯周ポケットのチェックは全身麻酔下で行うので、体調のチェックも大切です。特に心臓が悪くないか細心の注意を払って聴診をします。

歯石除去当日の流れ

歯石を除去するためにあじな病院に来院した際の流れをざっとご紹介します。

朝食を抜いて来院。高齢犬や病気の犬には麻酔の前に内臓の助けをするお注射

歯石を除去するために鎮静剤をお注射。眠るまでに5分から15分程度

酸素をしっかり吸わせながら心電図を確認。事故の予防・安全第一

歯の状態を確認。抜歯が必要なときは局所麻酔や全身麻酔を追加。

歯石を鉗子で取り除き、超音波スケーラーで残りの歯石をキレイに取り除きます。

原石から宝石を削り出すような気分で、ピカピカにワンちゃんの歯を磨き上げます。


処置が終わったら歯をフッ素でコーティングし、犬の目を覚ます注射をします。
5−15分ほどで立ち上がるので、飼い主さんにお返しして処置終了です。

口をキレイにした後のケア

歯をキレイにした後は、今後の歯石予防に愛犬とできることを飼い主さんとご相談します。

①歯周菌をやっつける抗生物質の投与
②歯磨き
③お口の検診
④歯磨きができないときは歯周病ケアのスプレー、お口の善玉菌などの口腔ケアグッズ

3 全身麻酔について

ボン

全身麻酔ってこわい?

遵先生

歯石を取るだけなら、鎮静剤=犬が静かに眠ってもらう薬で歯石は取れるからそこまでこわがる必要はないよ。手術をするときには切っても痛くないレベルまで深く麻酔をかけるから、呼吸が止まったり血圧が下がったりする危険が高くなるんだ。それで「麻酔はこわい」というイメージがあるんだよね。

あじな動物病院では、以下のポイントに気をつけて歯の処置を行っています。

  • バランス麻酔=いくつかの麻酔、鎮静薬を組み合わせることで一つ一つの薬の量を少なく済ませ、犬の負担を減らしています。
  • 拮抗剤=目覚ましの注射を準備し、麻酔中に異常がみられればすぐに処置を中止して麻酔から覚めさせる準備をしています。
  • 心臓や腎臓の循環を良くする注射をしてから麻酔に入ることで、麻酔中の血圧の低下を予防しています。

歯石を取るだけであれば犬が静かに寝ていてくれる鎮静剤・睡眠薬と鎮痛剤を組み合わせることで処置が可能です。歯を抜く必要があるときは痛みが強いために、局所麻酔や全身麻酔の追加して歯の処置を行います。

犬の口臭で困っているけれど全身麻酔に不安がある方は、まずはワンちゃんと一緒に来院して麻酔について気軽にご相談ください。

ご予約はこちらから

広島県廿日市市阿品台3丁目1−1−103
あじな動物病院
TEL 0829-39-6292

最後に

犬にとってガジガジかじることは、運動であり、ストレス発散であり、歯の健康を維持するとても大切な楽しみです。かじるのが大好きな犬ですが、小型犬の歯と歯茎は存外にもろい一面があります。歯周病で歯がボロボロになってかじる楽しみがなくならないように、歯周菌が歯茎から体のあちこちへ入りこんで病気にならないように、あじな動物病院と一緒にお口のケアについて考えていきましょう。

<あじな動物病院でお待ちしてます♫>

※1 かむこと研究室 ロッテ:すぐできる脳内改革! 噛むことでストレスフリーになる!?
   https://kamukoto.jp/brain/692
※2 山代久美子ら.僧帽弁閉鎖不全症の心臓における口腔内細菌の検出.第96回日本獣医麻酔外科学会抄録.(2012)

※3 raw meaty bones, Tom Lonsdale, Rivetco P/L

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私がこの記事を書いています

釧路市生まれの旭川育ち。2000年北海道大学獣医学部卒業。広島県廿日市市あじな動物病院の院長。また一緒に歩こうを合言葉に、椎間板ヘルニアの犬に鍼治療を行い、元気になったワンちゃんには体を丈夫にするお手伝いを「あじなのお食事相談」にて一緒に考えてまいります。

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