犬の避妊・去勢手術の良い点と悪い点、安全に手術をするための工夫
広島県廿日市市、あじな動物病院の中西です。この記事では犬の避妊・去勢手術を「安全に」・「犬の負担を少なく」行うための取り組みと、手術についての疑問や気をつけたいことをまとめています。
1 避妊(去勢)手術はした方がいいの?
先生、避妊(去勢)手術はした方がいいよね?
メスのワンちゃんなら手術をすることで子宮の病気が防げ、乳腺腫瘍の発生率が下がるメリットがあるよ。オスの犬はマーキングをしにくくなって飼いやすくなる。ただ「太りやすくなる」犬が多いから、良いことばかりではないんだ。全身麻酔をかけるリスクもあるしね。
避妊・去勢手術は、健康なワンちゃんにメスを入れます。あじな動物病院では手術が必要なのかどうか、手術をする時期、犬と飼い主さんとのメリットとデメリットを飼い主さんと相談して手術をするか決めています。
避妊・去勢手術のメリット
- 女性ホルモン、男性ホルモンに振り回されることがなくなる。
- メスの犬は生理にともなう気持ちの不安定さ、オスの犬はマーキングのトラブル、メス犬への欲求が減って飼いやすくなる
- メスは子宮蓄膿症にかかる心配がなくなる。乳腺腫瘍の発生率が下がる。
避妊・去勢のデメリット
- 全身麻酔のリスクがある。特に1kg台の超小型犬や短頭種など
- 太りやすくなる
- 甲状腺機能低下症など、ホルモン疾患の発症リスクが上がる
- 性ホルモンが出なくなることで、将来お漏らしをするリスクが上がる
- 毛質が変わる、脱毛するリスクがある
例えばボンちゃんみたいに食べるのが大好きで、他のオスにはあまり興味が無いオスなら無理に去勢手術をする必要はないよね。(絶対に太っちゃうから・・・。)
ダイエット無理・・・。
逆に生理の度に痛みでイライラして落ち着かないメスのワンちゃん、オス犬を見るとガウガウ吠え立てるオスの犬、家の中でマーキングをして困っているワンちゃんは避妊や去勢をすることで、一緒に暮らしやすくなるメリットが大きいと考えるよ。
2 手術日まで注意点
手術の日が決まったら、
手術の1週間ほど前から他の犬との接触を避ける
異性の犬と触れ合うと性ホルモンが放出されますが、精神的に不安定になり手術後のホルモンバランスが崩れやすくなります。他の犬との接触を避けて手術に望むとより精神的に安定しやすくなり、麻酔も安定します。
手術当日の朝食は抜く
麻酔や鎮痛剤で気持ち悪くなってしまう犬がいます。誤嚥などの事故のもとになってしまうので、ワンちゃんの朝食を抜くのを忘れないように気をつけてもらいます。
3 麻酔と手術
重い病気のない人間の手術における全身麻酔の死亡率は約3万人に1人と言われていますが、体の小さいペットの犬では麻酔事故がより高い確率で起こるという統計があります(約二千頭に1頭※)
あじな動物病院では安全に麻酔・手術を行うため、さまざまな取り組みをしています。
- いくつかの麻酔、鎮静薬を組み合わせることで一つ一つの薬の量を少なくし、犬への負担を減らす
- 拮抗薬=麻酔を覚ますお薬を準備し、異常があればすぐに処置を中止して麻酔を覚ませる体制
- プライミング:不整脈に対応するお薬をあらかじめ少量注射し、事故にそなえる注射をする
- 手術をする場所に局所麻酔を注射し、なるべく全身麻酔の量を減らす
- 手術には血管を挟んで止血する「シーリングシステム」を使用。手で血管を縛るより早く手術が終わります。
- 手術には溶けてなくなる吸収性縫合糸を使用。体に糸が残らず、縫合糸反応性肉芽腫のような病気を予防できます。
体重が1kg〜2kgの極小犬や、鼻の短い短頭種は麻酔のリスクがより高くなります。麻酔について不安があるときは、獣医師とよく話し合った上で手術を決めましょう。
4 手術の後は
お腹にバンデージを巻いて帰宅です。鎮痛剤と化膿止めを飲んで抜糸までは安静にします。
術後3−5日は痛みがあり、体調も不安定になりやすいので食欲や排便・排尿の様子に気を配りましょう。
2週間ほどで抜糸です。
避妊去勢ついてのご相談はこちらまで
広島県廿日市市阿品台3丁目1−1−103
あじな動物病院
TEL 0829-39-6292
※参考文献 http://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2015/03/topics.vol_.34.pdf